アイキャッチ~挨拶~
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はじめに

よく「猫はすぐに忘れる、恩を忘れる」なんて言われることがあります。
なのに、すぐ忘れるとか言いながら「猫は七代祟る」なんてことまで言われます。

いったい誰がこんなことを言いだしたのでしょうね。
ひどい誹謗中傷だと思います。
腹立たしい限り。

猫は別にすぐに忘れるなんてことはありません。
恩も感謝も忘れない。
怒りも忘れませんが・・・・・

今回の話は、とある人物が最近体験したという不思議話です。
実話かどうかは分かりませんが、こんなことがあっても不思議ではないと思いませんか?

次の項からは、その経験者視点で話させていただきます。


ある猫ちゃんとの出会い

たしか小学生の時の夏、8月くらいだったと思います。
友人と下校していた最中、とある猫ちゃんと出会いました。

公園でみんなで遊び、夕方が来たので帰ろうとしていた時。
茂みの中から1匹の猫ちゃんが出てきたんです。
子猫よりも少し大きく育ったくらいの猫だったと思います。

「猫ちゃんだ~!」
そんなことを言いながらみんなで駆け寄ったのですが、その猫ちゃんは逃げようとしません。
「人懐っこい子なのかな?」
そう思っていたのですが・・・・・

実は違う理由だったのです。


どうすれば・・・・・

その猫ちゃん、実はすごく弱っていたのです。
フラフラしている感じで体はボロボロの状態でした。

私も友人たちもすごく心配になりました。
でも、まだ子供だったのでどうしたらいいのか分からない。
家に連れて帰っていいという友達はいません。
うちは2匹猫ちゃんを買っていましたが、これ以上は無理だし連れて帰ると親に怒られる。
(そう思っていましたが、今考えれば連れて帰っても怒られることなく両親が助けてくれただろうと思います)

次第に時間がたって暗くなってくる。
私たちはパニックになっていたのだと思います。

挨拶に来た猫1


保護

そんな時、1人の友人が言いました。
「とにかく、どこかにかくまってあげない?」

みんなその意見に飛びつきました。
近くのスーパーで段ボール箱をもらって、牛乳を買ってきました。
そして、近くの友人が家に帰って新聞紙を持参、箱に敷き詰めました。
そうして、その中に猫ちゃんを入れて、落ちていた容器に牛乳をついで置きました。
そして、その箱を近くの茂みの奥に置いたんです。

「そこで大人しくしていてね」
その日はそう声をかけて家に帰りました。

今考えれば、その方法が最良だったとはとても思えません。
でも、子供だった私たちにはそれがせいいっぱいでした。


猫ちゃんの世話

翌日、学校が終わったらすぐに猫ちゃんのもとに駆け付けました。
「どうしているだろう、まだあそこにいてくれるかな?」
そう思いながら。

猫ちゃんは、まだそこで大人しくしていました。
牛乳も少し減っていたので、おそらく飲んでくれたのだろうと思います。
本当に嬉しかったです。

その後友人たちもやってきて、猫ちゃんの様子を見て喜んでいました。
みんな心配していたんです。

その日も、少し牛乳を追加してあげてから家に帰りました。
明日はもっと元気になることを祈りながら。

ちなみに、私はその猫ちゃんに「トッポ」という名を付けました。
いつまでも名前無しだと可哀そうだったので。


パニック

翌日、私はまた大急ぎで公園に向かいました。
友人たちは来れないと言っていたので、今日は私1人でした。

うちでは猫ちゃんを2匹飼っていましたので、その子たちのご飯を少し拝借して持っていきました。
トッポに食べさせてあげようと思って。

でも・・・・・
いつもの場所にたどり着いてみると、猫ちゃんは箱の中で横たわっていました。
痙攣するように、時々ピクピクと動きながら。

私はパニックになって泣き出してしまいました。
どうすればいいのか、まったく分からなかったんです。
「トッポ、トッポ」
そう言って泣きながら公園の中を歩き回りました。


おばさんの助け

そんな私の様子を見かけた知らないおばさんが、「どうしたの?」と声をかけてくれました。
私が泣きながら理由を話すと、おばさんは一緒にトッポの様子を見に来てくれました。
そして、箱ごと抱え上げて「私の家においで」と言ってくれたんです。

おばさんの家に行くと、猫ちゃんが数匹寄ってきました。
その子たちを飼っていたらしく、おばさんも猫ちゃん好きだったみたいなんです。

そうして、奥からタオルとミルクを持ってきて、トッポの世話をしてくれました。
そして、私に言ってくれたんです。

「この子は今頑張っているんだよ」
「神様にお願いしておきなさい。きっと元気になってくれるから」

その言葉は今でもよく覚えています。

しばらくトッポの世話をしてくれるおばさんと一緒にトッポを見守っていました。
でも、家に帰らなければいけない時間になってしまったので、しかたなく帰宅しました。
「明日もまた来るね」
そう言ってから。
おばさんは優しく「いつでもおいで」と言ってくれました。


おばさんの家で

翌日、学校が終わってから大急ぎでおばさんの家に向かいました。
トッポが心配でたまらなず、ドキドキしながら向かったのです。

すると、トッポは箱の中で起き上がっていました。
完全に元気になったわけではないのですが、しっかりと自分で起き上がっていたんです。
本当に嬉しかった。
思わず、また涙が出そうになったことを覚えています。

しばらくおばさんと一緒にトッポを見守っていたのですが、どうしても時間はすぎていってしまいます。
帰宅しなければならない時間が来てしまい、後ろ髪をひかれながら家に帰ることにしました。

でも、それから2日間はどうしても来ることが出来ません。
「3日後にまた来るから」
おばさんにそう言って家に帰りました。

挨拶に来た猫2


悲しみ

3日後、私はウキウキしながらおばさんの家に向かいました。
「久しぶりにトッポに会える」
そう思うと嬉しくてしかたなかったんです。

でも・・・・・

おばさんの家についてインターホンを押すと、おばさんが玄関に迎えに出てきてくれました。
でも、家に入れてくれないんです。
少し悲しそうな顔をしながら。

それを見て、私は分かってしまいました。
悲しいことが起きたということを。
「トッポ、死んじゃったの?」
おばさんは悲し気な顔でうなづきました。

おばさんは、庭にトッポのお墓を作ってくれていました。
泣きじゃくる私を、おばさんはお墓につれていってくれました。
そして、こう声をかけてくれたんです。

「君がいなかったら、トッポは誰と会うこともなく亡くなっていたんだよ」
「君のおかげで、トッポはこれまで生きてこれたの」
「優しくしてもらえて、あたたかい場所でご飯も食べることが出来た」
「トッポはきっと君に感謝しているよ」

今考えてみると、おばさんはトッポが長くないことが分かっていたのかもしれません。
だから病院に連れて行くこともなく、家で優しく世話をしてくれたんだろうと。

その日以降、おばさんの家を訪れることはありませんでした。
どうしてもトッポのことを思い出して悲しくなってしまいますから。
そうして、トッポの思い出をかかえたまま、私は日々をすごしていきました。

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あの公園に

そして時がたち、私は大学生になりました。
でも、トッポのことは忘れたことはありません。
私にとって忘れられない悲しい記憶ですから。

実家から通っていた私は、あの時の公園の近くをよく通ります。
でも、あの日以降私はその公園に立ち入ったことがありません。
よく遊んでいた場所ですが、今では悲しい思い出しかない場所ですから。

でも、その日はなぜかちょっと違ったんです。
ふとその公園に入ってみようという気持ちになったんです。
不思議なことです。
もしかしたら、そのように導かれたのかもしれません。

そうしてしばらくベンチの上でぼーっとしてすごしていました。


トッポとの再会?

その時、一匹の猫ちゃんがあの時の茂みの中から出てきたんです。

私は衝撃を受けました。
今でも忘れたことのないトッポ、その子とそっくりな姿をしていたんです。
その猫ちゃんは、記憶にあるトッポの体の模様と全く同じでした。

その猫ちゃん、なぜか私の前で立ち止まり見つめてきました。
私もその子をずっと見つめていました。
どのくらいの時間だったでしょうか。
短かったかもしれませんし長かったかもしれません。
時がたつのも忘れていたので、どうだったか覚えていないのです。

その時、なぜか急に涙が出てきました。
「もしかしてトッポ?」
私は思わずそう声をかけていたんです。

するとその猫ちゃん、一言鳴いた後に私に近づいてきました。
そして、グルグル言いながら私の脚に顔をすりつけてきたんです。

私はその時、理由もないけど確信してしまいました。
この子はトッポなんだって。
生まれ変わって私に会いに来てくれたんだって。

少しして、その子は一声鳴いてから離れていきました。
そして、公園の出口でこちらを振り返り、頷くような仕草をしてから出て行ったんです。
私は、その様子を涙を流しながら呆然として見続けていました。

以降、その猫ちゃんとは一度も会っていません。

挨拶に来た猫3


信じる気持ち

私が体験した不思議な話はこれで終わりです。

「ただの思い込みでしょ」
「勘違いしているだけ」
「再会したと思いたいだけ」

そんなふうに言うかたもいらっしゃると思います。

たしかにただの思い込みかもしれません。
でも、今でも私はあれがトッポだったと信じています。
「生まれ変わって今では元気にやっているよ」
そう私に挨拶に来てくれたんだと信じています。

この経験で、私の悲しい記憶に少し暖かい記憶が加わることになりました。
これからも、トッポのことを忘れることなく、これからの人生を生きていこうと思います。

挨拶に来た猫4


最後に

 

以上で、このかたが経験した不思議な話は終わりです。

当然、ただの勘違い・思い込みの可能性はあるでしょう。
でも、私もこれは本当にトッポだったのだと信じています。
猫は決して感謝を忘れない生き物ですから、こんなことがあっても不思議ではないと思っていますから。

今でもトッポは生まれ変わって元気にすごしているのだと信じます。